研究課題/領域番号 |
21670002
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
白崎 竜一 大阪大学, 生命機能研究科, 准教授 (40423149)
|
研究期間 (年度) |
2009-05-11 – 2014-03-31
|
キーワード | 神経回路網形成 / 軸索ガイダンス / 交連ニューロン / 運命決定 / 転写調節因子 / 正中交差 / フロアプレート / 細胞間相互作用 |
研究概要 |
本研究課題では、マウス交連ニューロンの発生分化プログラムに焦点をあて、神経回路網の多様性を生み出す分子機構の解明を目指している。前年度までの研究により、交連ニューロンのサブクラスに特異的に発現する転写調節因子によって発現制御を受けている軸索ガイダンス関連分子の候補を複数同定した。そこで平成24年度においては、これらの分子のin vivoにおける機能解析を行った。ここでは特に、siRNAによるノックダウン(loss-of-function)実験を優先的に行い、in vivoにける軸索伸長パターンの表現型を詳細に解析することで、これらの分子の神経回路網形成における役割を評価した。その結果、GTPase活性化タンパク質ファミリーに属する分子、低分子量G蛋白質結合タンパク質ファミリーに属する分子、GPIアンカー型タンパク質に属する分子が交連ニューロン軸索の正中交差後の軸索伸長パターン形成に関わっていることを支持する実験結果を得た。一方で、交連ニューロン軸索の正中交差前後で引き起こされている軸索ガイダンスプログラムの再編成機構に関する研究においては、本年度は前年度までの研究で見出されたMAPKカスケードの細胞内シグナル分子のin vivoにおける機能解析を行った。その結果、このシグナル分子は軸索の正中交差直前に活性型に転換し、正中交差後も軸索内で活性型を維持していた。さらに、この分子の機能を阻害させると正中交差後の前後軸方向への軸索伸長のための方向転換が妨げられることが明らかとなった。したがって、この細胞内シグナル分子は正中交差前後での軸索ガイダンスプログラムの再編成過程において重要な役割を担っていることが示唆された。また、このシグナル分子が関わる軸索ガイダンスプログラムの再編成誘導には、軸索と正中部フロアプレート細胞との直接的な相互作用は必ずしも必要ではないことも明らかとなった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題では、神経回路網の多様性を生み出す分子機構の解明を目指すために2つの大きな目的を設定して研究を推進している。現在までの達成度としては、目的の1つ目においては当初からの計画通りに順調に進展しており、新規性の高い成果が得られつつある。目的の2つ目においては一部に遅れがあったが、新たなアプローチの導入により一定の成果が得られつつある。したがって、全体としては概ね順調に研究が進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の研究推進方策としては、目的1「交連ニューロンのサブクラス特異的な軸索ガイダンスプログラムの同定」においては、昨年度までの一連のスクリーニングの過程で見出され、現段階では未解析な分子についても昨年度と同様に、交連ニューロン特異的な遺伝子発現システムを用いて引き続きin vivoにおける詳細な機能解析を行い、それらの分子の軸索ガイダンスにおける役割を明らかにする。目的2「軸索ガイダンスプログラムの再編成を引き起こす分子機構の解明」においては、軸索ガイダンス分子受容体の正中交差前後における選択的局在の制御機構の解明へのさらなる手がかりを得るために、受容体の様々な細胞内ドメインの中でも潜在的に特定の機能を有することが予想されるドメインや特定のアミノ酸配列が生み出す機能性モチーフに着目し引き続き検討を加える。
|