研究課題
研究実施計画に記した以下の4項目の実験を行い、成体脳のニューロン新生の制御機構について新しい知見が得られた。1.上衣細胞繊毛の極性決定機構の解析脳室壁の上衣細胞に遺伝子導入を行いPCP経路構成因子の機能を低下させたところ、上衣細胞の繊毛の方向が乱れることが明らかになった。このことから、上衣細胞繊毛の方向性の決定においてPCP経路が重要な役割を果たしていることが確認された。2.新生ニューロンの移動制御機構の解析脳室下帯におけるRoboの機能を解析するため、Roboドミナントネガティブ変異体を導入して解析したところ、ニューロンの周囲に存在するアストロサイトの形態変化にRoboが必要であることが明らかになった。さらに新生ニューロンの移動に関与するタンパク質Girdinに結合するタンパク質を探索し、興味深いタンパクが多数同定された。3.ゼブラフィッシュ成魚の脳室下帯の解析バレンシア大学Jose Manuel Garcia Verdugo教授との共同研究により電子顕微鏡観察を行い、ゼブラフィッシュ脳室下帯を構成する細胞の微細形態を解析し、マウスの脳室下帯に存在する細胞と類似した構造を有する細胞が観察された。さらに、遺伝学研究所川上浩一教授との共同研究により、脳室下帯または嗅球で発現する遺伝子を探索し、興味深い遺伝子を複数同定した。4.嗅球傍糸球細胞の新生制御機構の解析脱着可能な鼻孔閉塞プラグを用いて入力を調節し、BrdU標識と成熟ニューロンマーカー・細胞死マーカーを固定切片にて解析を行い、嗅覚入力が傍糸球細胞の成熟・生存維持に影響を与えることが確認された。さらに、生理学研究所鍋倉教授との共同研究により、2光子顕微鏡による嗅球内新生ニューロンのin vivoライブイメージングを行い、細胞のターンノーバーを生きたまま解析することが可能になった。
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