研究実績の概要 |
心理物理学的手法による研究では,次の二つの知見について追加測定および解析を実施して,その拡充・確証作業を進めた:1) 眼球運動および視覚刺激の空間的位置を手がかりにすることにより複数の事前分布の同時獲得が可能となる (Nagai, Suzuki, Miyazaki, Kitazawa.近刊), 2) 視-聴覚の時間順序判断でも lag adaptation の作用を無効化すれば,ベイズ統合モデルの予見と一致する心理物理関数の変化が観測される (Yamamoto, Miyazaki, Iwano, Kitazawa.改訂中). 神経生理学的測定による研究では,fMRIおよびEEGを用いた実験を中心に推進した.我々は上記の知見 2) のように時間順序判断におけるベイズ統合の広汎性を確認した一方で、ベイズ統合が作用しない課題が存在することも発見した.即ち,その課題を統制条件とし,時間順序判断中の脳活動から統制課題中の脳活動を差し引くことにより,ベイズ統合への関与が仮定される脳部位を特定することができる.これに基づき,fMRIを用いて16名の被験者を対象とした測定を行った結果,両側の背側運動前野 (PMd) と視床,左の腹側運動前野 (PMv) と後頭頂野 (PPC) の活動が認られた.また多重比較の補正を課さない場合,左の島皮質前部および右の小脳の活動も認められた.また,EEG測定では,Miyazaki et al (2006) に従い,左右の手に与える触覚刺激の時間差を左先/右先に偏向したガウス分布からサンプルする2条件を設定した.その条件下で時間順序判断を遂行中の被験者14名について測定を実施した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では心理物理,fMRI, EEG, TMS, 反射という5つの測定法の利用を設定し,これまでに心理物理学的知見の拡充,fMRIによる時間順序判断における関連脳部位活動の候補の同定,EEGによる関連脳活動の時間的推移の特定の3つが進められている.加えて,TMSについても,ベイズ統合と機能的類似点を有する神経心理課題を用いた共同研究で成果が得られており,現時点までの達成度としておおむね順調と判断できる.
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