研究概要 |
観測については前年度までに重力探査のためのセンサーの問題点を明らかとしたうえでデジタルサーボセンサーを新たに開発し,その基本性能について確認をした。今年度は,このデジタルサーボセンサーを実際に無人ヘリコプターをはじめとして各種キャリアに搭載してデータを取得し,重力変化を測定可能かどうかを実験した。まず,大型観覧車に搭載して重力変化を測定したところ,デジタルサーボセンサーは短周期の変動にたいして演算処理が追随できず,正しい波形が得られないことが明らかとなった。そのため,短周期に対してセンサーが感度をもたないようにセンサーを改良した。 改良されたセンサーを小型ボートに搭載し,漁船で曳航しながら測定を行い,短周期の変動に対してロバストなセンサーであることが確認された。次に,このセンサーを遠隔操作可能な自律航行型無人ヘリコプターに搭載して測定を行った。重力変化が理論的に推定可能で測定結果の妥当性を確認できるように,堤高100mを超える大型重力式ダムを横切るようにヘリコプターを飛ばした。また,重力測定用センサーとともに,磁気センサー,ジャイロ,GPS,水平動加速度計も搭載して記録を取った。 この結果,磁気センサーの出力はそのままダムの磁性体の位置を正確に反映していることがわかったが,重力センサーはそのままでは機体の振動の影響が大きく,微少な重力変化を反映しているかどうか明確ではなかった。そこで,水平動加速度計の出力を用いて姿勢の水平補正を行ったうえでHilbert-Huang変換を応用することで重力の微少な変動を抽出できることを示した。また,ジャイロとGPSの組合わせによってセンサーの姿勢を正確に推定する手法を開発した。 一方,解析法については,重力と微動の同時解析による3次元構造推定手法を確立するとともに,重力と磁気,微動の併合処理のための手法の枠組みを完成し,鳥取平野における実際の記録に適用して手法の妥当性を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
微動,重力,磁気の3つの異なる物理量を併合処理するための解析法を確立することが本研究の目的であるが,重力測定用センサーが当初予定していたセンサーの供給をうけられず,結果的に新規開発することとなったため性能試験が遅れ気味であったが,新型センサーの性能が期待されるものに達したため遅れを取り戻した。解析法についても,複数のアプローチで行っており,いずれのアプローチからも妥当な結果が得られるようになっており,ほぼ予定通りの成果が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
当初予定には含まれていなかったが,新規開発した重力測定用センサーの開発に目処がついて,実際の観測で使えるようになった。しかし,さらなる改良の余地があるため重力測定用センサーの改良は継続する。解析については当初の目標である微動,重力,磁気の異なる物理量の併合処理のための手法の開発を継続する。さらに実データに適用して手法の妥当性を検証する。
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