研究代表者は連携研究者である小林真一氏(東北大)、辻雄氏(東大)と共著の、CM楕円曲線のポリログの実現の具体的記述に関する概説論文を数理研講究録別冊から出版した。これと平行して、連携研究者であるGuido Kings氏(Regensburg大)とともに虚2次体に付随するHecke指標のp進Beilinson予想の研究を進めた。特に今年度中6月、9月、3月の3回に各1週間程度、Kings氏と研究打ち合わせをするためにドイツに渡航した。素数pがordinaryなどという最も簡単な場合にp進Beilinson予想証明することに成功し、この結果の概説を現在執筆中である。また、連携研究者である安田正大氏(京大)を慶應大に今年度中2回招聘し、曲線のポリログのHodge実現の具体的記述について予備的研究を行った。本プロジェクトでは研究を推進するため、今年度中、大槻玲、中村健太郎、加塩朋和、萩原啓、新井啓介の計5名を特別研究助教として雇用した。大槻玲氏はpがsupersingularな場合に、虚2次体のHecke指標に付随するp進L関数のテータ函数による構成を研究した。中村健太郎氏はTrianguline表現のZariski稠密性の研究を行った。この結果の概説を論文にまとめ、現在投稿中である。加塩朋和氏はFontaineのp進周期環に値を持つ関数の予備的研究を始めた。萩原啓氏と新井啓介氏はそれぞれ「モチーフのp進実現とその周辺」、「ガロア表現と保型形式」という題名の連続講演を行い、mixed Weil cohomologyやHilbert modular formに付随するガロア表現の構成など、今後プロジェクトを進めるのに必要と予想される知識を本プロジェクトの構成員に提供した。
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