研究課題
今年度には、堆積物を用いたメキシコ湾沿岸や極氷床に関連した過去の海水準変動および気候変動研究、タヒチのサンゴの微量金属を用いた融氷期の環境復元、木材のコアを用いた10年スケールの気候変動と太陽活動との関係についての研究などを行った。堆積環境復元によりメキシコ湾北部沿岸では、1万年前の海水準上昇イベントと4000年前以降の気候変動が明らかになった。また、タヒチのコアサンプルから、サンゴ骨格中の微量金属の変化により、過去の水温変化を明らかにした。今回の研究では、新しい水温指標としてウランを導入し、融氷期の南太平洋赤道域の表層水温変化について初めて明らかにした。その結果、およそ15,000年前の融氷期中期には、ラニーニャ的な環境になっていたことが明らかになった。氷期に存在していた大陸氷床のおよそ半量が融解した当時の環境が明らかになったことにより、気候変動モデルの動作特性の理解について大きな貢献となることが期待される。また、太陽活動と気候変動について、地球温暖化問題と絡めて大きな議論となっているが、太陽活動と気候変動についての因果関係を明確にできるデータに基づく議論は少ない。今回は、木材の年輪に含まれている放射性炭素含有量変化(太陽活動指標)とセルロースの酸素同位体比変化を用いて、気候変動と太陽活動の変化の関係を明らかにした。その結果、小氷期とわれ太陽活動が弱かった(マウンダー極小期)の日本列島での湿潤化が有意に認められた。気温についての復元は出来ていないが、相対湿度の変化という、別の気候指標の復元と太陽活動とを明確にリンクすることができた新しい結果として、論文はアメリカ科学アカデミー紀要に掲載された。また、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の第1作業部会の海水準と氷床変化についてのワークショップの5人の代表幹事の1人に選ばれ、報告書もまとめた。
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http://ofgs.aori.u-tokyo.ac.jp/~yokoyama