研究概要 |
テロメアRNAをターゲットとした1分子型蛍光プローブを開発した. テロメアRNAに特異的にPUM1変異体が結合すると, GFP再構成により蛍光が発するタンパク質を構築した. PUMI変異体とテロメアRNAとの解離定数, およびRNA配列に対する特異性を評価した. 生細胞内におけるテロメアRNAの1分子イメージングを, 全反射蛍光顕微鏡により可能にした. テロメアRNAが細胞内でダイナミックな挙動を示すことを初めて明らかにした. SUMO化修飾を受ける新規タンパク質の候補の一つであるATAC2の機能解析を行った. 先ず精製したATAC2を用いて, in vitro系でSUMO化修飾を受けることを実証した. さらにSUMO化を受けるアミノ酸残基の同定を行った. アミノ酸配列からSUMO化を受ける候補アミノ酸を選定し, Alaに置換した変異体を作製した. In vitroおよびin vivo系にてATAC2変異体のSUMO化を解析し, ATAC2の特定のアミノ酸がSUMO化を受ける事を明らかにした. さらにSUMO化に伴い相互作用するタンパク質を, MS解析により同定することに成功した. Akt/PKBを光で制御するモジュール開発にこれまでに成功している. シグナルの下流分子であるアクチン重合に着目し解析を行った. 光によりAkt/PKB活性を細胞局所で活性化すると, その局所でアクチン重合起こり, 細胞が一方向に移動することが解った. また細胞全体に光照射しAkt/KBを活性化すると, 細胞膜のラッフリング現象を観測することができた. PIP3蛍光プローブを用いると, 膜のラッフリングとPIP3産生がカップルしていることを明らかにした. 様々な光刺激に対する細胞応答を定量化し, 光刺激とAkt/PKBの活性化パターンの相関関係を提示する数理モデルの構築に成功した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究は, タンパク質の構造と機能に関する情報を最大限に活用し, 生体分子を光分析する独自の機能性タンパク質を創出する基盤技術の確立を目的としている. 3つの研究課題, 1)生きた細胞や生物個体内の生体分子の機能と動態を可視化する分子プローブの開発, 2)細胞内シグナル伝達に関与する新規分子種同定法, 3)生体分子の機能を時空間制御する機能性分子材料の開発いずれも, 当初の計画に加え, 新たな知見や技術開発・展開に繋がっている. 即ち, 細胞内pH測定やセカンドメッセンジャーであるPIP3発光分析法の開発, また神経軸索の光誘導技術はその代表例である.
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今後の研究の推進方策 |
課題1のイメージングでは, 開発した蛍光・発光再構成技術の更なる応用展開が挙げられる. 特に単一細胞内における特定分子や相互作用の定量的検出は, 今後の生命科学研究の重要な課題であり期待される技術である. 検出感度, 精度の向上が重要な課題となる. 課題2の生体分子の同定は, 同定したSUMO化タンパク質の機能解析が挙げられる. ATAC2以外にも新たなSUMO化タンパク質の候補が得られている. これらの生化学的解析は緊急の課題である. 課題3の光操作は, タンパク質リン酸化酵素一般に敷衍することが重要な課題となる. 光操作技術の開発にとどまらず, 定量的にリン酸化酵素活性化ができることを, 数理モデルを用いて立証した. 光操作と数理モデルの融合は独自のアイデアであり, 今後その一般性を提示することが重要な課題となる.
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