MEMS技術の発展に伴いマイクロスケールのデバイス作製が可能となり、それを駆動できるマイクロアクチュエータの研究が行われてきた。このマイクロアクチュエータの新しいアプローチとして、生体材料を駆動源とし、従来の人工アクチュエータにはない、化学エネルギのみで駆動、高いエネルギ変換効率、自己修復・自己組織化という特徴を持ったバイオアクチュエータの研究が注目されている。このようなバイオアクチュエータの研究例として、ラットの心筋細胞を用いたマイクロポンプの研究や自律的に移動するマイクロロボットの研究が報告されている。しかし、先述したバイオアクチュエータは哺乳類細胞を使用しており、培養環境を厳しく制御する必要がある。昆虫の細胞は、一般的にPHに対する許容範囲が広いため、昆虫の持つ筋細胞も同様の性質を持つと考えられる。細胞培養が確立されたラットのような実験動物を用いるのではなく、ロバストな耐環境性がある昆虫の筋細胞を駆動源として用いることで、駆動環境が広がり、将来的に室温で動作するシステムを構築できる点で、革新的なシステムが期待できる。そこで、本研究では、昆虫の筋生理学及び生化学の分野とマイクロナノロボティクス・メカトロニクスの分野を融合した全く新しい学問分野である、細胞ビルドアップ型ウエットナノロボティクスの創出を目指し、基盤技術の構築と新たな人工筋肉を用いたウエットナノロボット分野の開拓を目指す。今年度は、背脈管組織を、細胞レベルまで解離し、再構築し汎用性の高めることにより、幅広いデバイスへ応用することを目的としている。そこで、今回、様々な材料表面上に細胞シートを作製し、マイクロポンプへの実装を行い、評価実験を行った。
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