| 研究概要 |
研究の目的は,途上国に適用可能な新規下水処理技術の開発と,反応に関わる微生物生態の解明を行うことで,本邦発の環境技術を世界に発信し,途上国の水環境健全化・水資源確保に貢献することにある。以下に研究内容を記す。
(1)下水処理システムの開発:下水処理システム「UASB+DHS」の開発を継続した。システムの有機物(BOD)分解者としては,メタン生成古細菌,脱窒素細菌,BOD酸化菌に加えて,硫黄酸化還元サイクルの微生物も積極的に活用することとする。システム前段UASBは,下水を上昇流で供給する形式で,内部に気固液分離装置を有する。システム後段DHSは,スポンジ担体利用散水型装置であり,BOD酸化,硫化物酸化,汚泥減溶,および水質向上を図った。
(2)下水処理システムの運転因子の評価:実下水を供給するラボスケール下水処理装置を用いて,温度低下を伴う連続下水処理試験を行い,運転操作因子の評価,最適化を行った。
(3)装置保持微生物の増殖特性とBOD除去の役割評価:装置保持汚泥に対して,微生物存在割合・分布評価試験等を評価した。
(4)途上国の現地水質状況等の調査:コンケン(タイ東北部)を対象に進めた。
(5)セミパイロットスケール下水処理長期連続実証試験の実施:セミパイロット下水処理装置を製作し,長期連続実証試験を開始した。設置場所は,コンケン(タイ東北部)とした。途上国への適用のために必要な設計要件や,エネルギー消費,汚泥生成量等を評価した。
(6)電気培養による嫌気的硫黄酸化細菌集積:嫌気的硫黄酸化の現象は,酸化還元電位が-200-300mVにおいて観察される。この知見から,電位制御のできる電気培養装置を試作して嫌気的条件下で微生物を培養し,嫌気的硫黄酸化菌の集積を行った。
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