研究課題
本研究は、骨配向化制御という全く未知の部分に対し、材料工学的なアプローチがどこまで通用するかという挑戦的な研究であり、材料工学的手法を念頭におきつつ研究課題を解決することを目的とする。配向性の重要性を見出した微小領域X線回折法やナノインデンテーション法等の材料工学的手段を相補的に活用し、最終的には、骨関連分野における「異方性の材料科学」の重要性を示す新たな研究領域や方法論を生み出す。そのために、「骨配向化誘導」をキーワードに、(A)新規足場材料開発、(B)材料工学的手法適用、の大分類に分割し研究を推進している。初年度は、骨系細胞を人為的に制御し、骨配向化を促すための新規足場材料の開発として、形状設計として、異方性孔・溝導入による骨芽細胞遊走方向制御・骨配向化組織誘導を達成するとともに、応力分布に対するオステオサイトを通じての配向化現象をシーズとし、FEM解析とCADによる表面溝の導入方向を最適化した股関節インプラントの設計を行なった。さらに、応力遮蔽効果を考慮した弾性率の異なるTiならびにテフロンを用いて、骨軸依存性を持つ表面溝導入インプラントを作製し、ウサギに埋入した。一方、マウスでのコントロールとしての骨欠損再生実験では、一定以下の円柱状欠損では配向性の回復が図られず、骨配向化制御に対する、応力感受の閾値の存在が示唆された。さらに、材質制御としてはゼブラ型バイオメタル(ゼブラメタル)による骨系細胞誘導と配列化を試み、特に異なる生体親和性を持つ傾斜組成、積層構造を持つ金属担体から、拡散対法を用いた金属接合によるゼブラメタルの作製を行い、Ti/Agゼブラメタルの作製に成功した。その他、単結晶の柱面すべり線導入法による人工的な表面配向化起伏の形成と段差分布解析を行い、細胞配向化への道筋を明確化した。
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