研究概要 |
生物には,様々な局面で自己組織化による秩序形成過程が見られる.社会性昆虫に見られる社会行動もその中で特筆に値するものであるが,社会システムを構築するメカニズムは未知な部分が多い.本研究では,シロアリを材料に,ホルモンやフェロモンなどの個体の内外でシグナル機能を果たす分子のシステム構成に関わる機能解明を目的に,分子生物学・ゲノミクスなどの知見をベースに多角的な解析を試みている.本年度は,カースト分化に伴う発生過程の改変とシグナル分子の同定に向けての,分子検出および同定,解析・アッセイ系の確立を目指した.その結果,発生に関わる遺伝子をオオシロアリにおいて多数同定し,その発現動態を解析するに至っている.また,行動解析系も確立され,シロアリはカーストのニオイを認識して行動を可塑的に変えることなどが分かってきている.さらに,新たにポスドクも雇用し,化学分析系を立ち上げることに成功した.これにより,各カーストに特異的なニオイ物質の同定や,フェロモン分子の単離・同定を行うことが可能に成り,現在精力的に解析を進めている.また,カースト特異的な分泌タンパクが存在することも分かっていたため,分析系を立ち上げた.既に同定されている兵隊特異的リポカリンタンパクSOL1以外にも,複数のタンパクがカースト特異的に発現していることが明らかとなり,現在遺伝子を同定し発現解析を進行しつつある.これらの成果の一部を論文化し,国際誌に研究論文として公表した.
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