研究概要 |
平成23年度の研究では、ChIPプロトコールを改善し、反応溶液の体積の縮小、単一の反応チューブの使用、担体・キャリアの最適化による非特異的吸着の最小化と反応効率の向上、免疫沈降されたゲノムDNA断片の、独自プライマーペアによる網羅的かつ高精度な増幅を試み、その結果、10,000,000細胞からChIPしたものを希釈して得られる10,000細胞相当のDNA、10,000細胞から直接ChIPして得られるDNAを高い定量性(Q-PCRで定量)で増幅出来る方法論の開発に成功した(Kurimoto et al., unpublished results)。 また、EGFP-Blimp1ホモノックインマウス、BT-Blimp1:ビオチンリガーゼダブルホモマウス、EGFP-Blimp1ホモノックインES細胞、BT-Blimp1:ビオチンリガーゼダブルホモES細胞を樹立した。さらに、初期胚、PGCs、発育過程の卵母細胞で、非常に特異的に、高効率(-80%)で、Tamoxifen依存的に遺伝子組み換えを誘導するstella-MCMマウスを樹立した(Hirota et al., Biology of Reproduction, 85, 367-377, 2011)。このマウスを用いて、生殖系列の増殖・機能維持におけるBlimp1の機能の解析を行った。 ESCsを出発点として、エピブラスト様細胞(Epiblast-like cells : EpiLCs)を誘導し、さらにPGC様細胞(PGC-like cells : PGCLCs)を誘導することに成功した。重要なことに、PGCLCsを、生殖細胞を有さないW/Wvマウスの新生仔精巣に移植すると、健常な精子に分化し、それら精子は健常な子孫に貢献した(Hayashi et al., Cell, 146, 519-532, 2011)。
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今後の研究の推進方策 |
少数細胞から増幅したChIP-DNAを、次世代シークエンサーによるゲノムワイドなプロファイル解析で検証する。 発生9.5日目でBlimp1をノックアウトし、発生11,5日目のPGCsにおける遺伝子発現異常、細胞周期異常、細胞死の状態、エピゲノム異常を解析する。同様に、発生11.5日目でBlimp1をノックアウトし、オスの発生13.5日目のPGCsにおける遺伝子発現異常、細胞周期異常(有糸分裂停止異常)、細胞死の状態、エピゲノム異常、メスの発生17.5日目の生殖細胞の遺伝子発現異常、細胞周期異常(減数分裂進行異常)、細胞死の状態、エピゲノム異常を解析する。 ESCs, EpiLCs, PGCLCsと至る過程(試験管内生殖系列決定過程)における様々なヒストン修飾(H3K27me3, H3K27Ac, H3K4me3, H3K9me2)プロファイル及びDNAメチル化、DNAヒドロキシメチル化プロファイルを解析する。
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