研究概要 |
研究目的 我々は、オートファジーがユビキチン-プロテアソーム系と共にタンパク質やオルガネラの品質管理機構に貢献し、その破綻が肝障害、肝細胞がんや神経変性疾患を引き起こすこと、更に、一般に非選択的分解機構と考えられてきたオートファジーに上記病態発症に関与する選択基質があることを見出した。本研究の特色は、現在、国内外で未曾有の発展を遂げているオートファジー研究の中でも、これまでの我々の研究実績を基軸に「選択的オートファジーの破綻による病態発症」に焦点を当て、健康社会実現を目指した先駆的研究を展開することにある。 研究成果 今回、ヒト肝細胞がん患者の約25%においてオートファジー選択的基質p62が過剰に蓄積しp62とKeap1陽性の凝集体が形成されること、さらにその腫瘍部位において転写因子Nrf2が活性化されていることを発見した。さらに、p62を蓄積し、且つNrf2を活性化しているヒト肝細胞がんにおいて、p62遺伝子を欠損させると足場非依存的ながん細胞の増殖が抑制されること、その増殖障害はp62の野生型の過剰発現で回復する一方、Keap1と相互作用できないp62,変異体の過剰発現では回復されないことを確認した。従って、p62の蓄積、凝集を介したNrf2の活性化は、肝細胞がんの生存戦略に利用されていることを意味する。このことは、オートファジーを欠損したマウス肝臓においてp62の過剰蓄積を伴った腫瘍が形成されること、さらにその腫瘍形成がp62の同時欠損により大幅に抑制される知見とも一致した。
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