研究概要 |
C型レクチンMincle(macrophage inducible C-type lectin)はストレスに伴って発現が誘導され、炎症性サイトカイン産生等を促す活性化レセプターである。我々はこれまで、このMincleが生体の危機を感知して、炎症を促すセンサーとして機能していることを見出してきた。Mincleが認識するリガンドとして、損傷自己より放出される核タンパク質、SAP130(spliceosome-associ ated protein-130)、並びに非自己病原体である病原性真菌、Malasseziaを同定している。今回、新たにMincleが結核菌を認識することを見出した。結核菌成分を様々な有機溶媒を用いて分画・精製し、活性成分の同定を試みたところ、クロロホルム脂溶性画分に活性が抽出された。この画分を更に精製し、最終的に結核菌由来の糖脂質で古くから強いアジュバント活性を有することが知られていたトレハロースジミコール酸(trehalose-6,6'-dimycolate;TDM)がリガンドであることを同定した。TDM投与による全身性炎症、結核に類似した肺肉芽腫形成はMincle欠損マウスにおいて完全に失われたことから、MincleはTDMの必須の受容体であることが判明した(Ishikawa, et al.J.Exp.Med.2009)。結核菌感染に対する生体防御応答におけるMincleの重要性を強く示唆する結果であり、新たな治療法確立に向け貴重な情報を提供すると考えられる。
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