研究概要 |
1.マウス内骨膜領域より間葉系前駆細胞、骨芽細胞前駆細胞、成熟骨芽細胞を分離し、単一細胞レベルでニッチ分子の遺伝子発現解析をおこなった。マイクロアレイ解析の結果では、間葉系前駆細胞分画はサイトカインの発現が高く、成熟骨芽細胞は接着分子を高発現しているという結果を得ていたが、Single cell定量PCRアレイ解析の結果、成熟骨芽細胞を含むALCAM+Sca-1-分画に、骨芽細胞マーカーの発現が低く、N-cadherin、Angiopoietin-1、Thrombopoietinなどのサイトカインを産生している亜集団(約36%)があり、さらにそのうちの34%は、Sox2、Pof5f1(Oct3/4)、Nanogなどの多能性マーカーを発現していることを見いだした。このことから、ALCAM+Sca-1-分画のなかに幹細胞集団が含まれる可能性が示唆された。 2.マウスの成長に伴うニッチ構成細胞の遺伝子発現の変化を解析し、骨髄成熟過程における造血幹細胞-内骨膜ニッチ複合体相互作用の制御機構を検討した。その結果、Angiopoietin-1、Thrombopoietinなどのサイトカインは幼若期と成体で変化しないこと、幼若期の骨芽細胞では、Vegfa, Angiopoietin-2、Mmp9など血管新生因子の発現が高いことを明らかにした。こから結果から、幼若骨髄では骨髄血管のリモデリングが亢進し、血管性ニッチの機能が活性化され、造血幹細胞の増殖(自己複製)が誘導されていることが推測された。また、骨芽細胞におけるN-cadherin等の接着因子の発現が成長に伴い上昇することから、成体骨髄においては骨芽細胞性ニッチの機能が優位になってくるのではないかと考えられた。
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