ヒトリンパ球がエフェクター細胞として機能する結果、異種移植片対宿主病(x-GVHD)が発症するマウスモデルhu-PBL-NOGマウスを開発した。hu-PBL-NOGにおいては移植後ヒト活性化T細胞がそのエフェクターT細胞となり、4~6週以内にx-GVHDが出現するが、ヒトリンパ球移植後に抗CD26抗体を投与すると、x-GVHDの発症が抑制され、ヒトリンパ球が生着した。この系において、マウス白血病細胞株を皮下に摂取して、x-GVHDの効果により腫瘍細胞を治療する移植片対白血病(GVL)効果が見られるが、抗CD26抗体投与によって、x-GVHDの発症は抑制されるが、GVL効果は維持されされることが分かった。すなわち、CD26共刺激の抑制は免疫寛容を誘導するが、GVLによる抗腫瘍効果は維持されることが判明し、CD26をターゲットとした免疫寛容誘導の有効性が示唆された。移植免疫寛容誘導においてはCD4陽性Tリンパ球のみならず、CD8陽性Tリンパ球の関与も重要であるが、CD8陽性T細胞を共刺激すると、CD28共刺激に比し、CD26共刺激ではgranzyme B分泌が強力に誘導されであることを明らかにした。これらの結果は、CD26共刺激を介したCD8陽性T細胞によるcytotoxic effectは、CD28経路とは違った刺激であり、GVHDとGVLを分離した移植免疫寛容療法の分子基盤の解明の糸口となるものである。
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