1.ヒトT細胞が炎症のエフェクター細胞として働く病態モデルとして、xeno-GVHDモデルマウス(huPBL-NOGマウス)の系を用いた。このマウスに対し、ヒト化抗CD26抗体を投与することで、ヒトT細胞がマウス体内に生着していながら著明な生存期間の延長と体重減少の軽減が認められた。マウス体内でのヒトT細胞のCD26の発現を経時的に解析した結果、CD4^+T細胞、CD8^+T細胞ともに移植初期にCD26の発現が移植前よりも顕著に増強していたのに対し、抗CD26抗体を投与するとCD26陽性T細胞の生着が阻害されることが示された。さらに、CFSEでラベルしたヒトPBMCをマウスに移植して細胞分裂の解析を行った結果、抗CD26抗体の投与によりヒトCD8^+T細胞の細胞分裂が優先的に抑制されることが示された。また、in vitroにおいて、代表的な共刺激分子であるCD28共刺激と比較してCD26共刺激はヒトCD8^+T細胞に対し、細胞傷害における主要なエフェクター分子であるGranzyme Bの発現を顕著に亢進し、炎症性サイトカインであるTNF-α、IFN-γおよび可溶性Fas Ligandの産生を選択的に増強し、非常に強い細胞傷害活性を獲得させることを明らかにした。 2.臍帯血T細胞のCD26におけるおける、より詳細なシグナル伝達機序を解析した。このために、臍帯血CD4陽性T細胞を分離してCD3+CD26抗体による共刺激にける遺伝子変化を、有名な共刺激であるCD3+CD28抗体刺激後の遺伝子変化と比較解析を行なった。約100遺伝子の有意な増加あるいは抑制が認められ、現在、クラスター解析、pathway解析を行なっており、次年度に続けてCD26共刺激における、臍帯血T細胞の分子生物学的なメカニズムを解明しているところである。この研究により、臍帯血T細胞のCD26共刺激不全の分子メカニズムを明らかにすることができ、臍帯血を用いた免疫誘導療法の可能性を探ることができる。
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