研究課題/領域番号 |
21679005
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
大沼 圭 東京大学, 医科学研究所, 助教 (10396872)
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キーワード | CD26 / Caveolin-1 / CD8 / 共刺激 / 移植片対宿主病 / CTLA4-Ig |
研究概要 |
1.ヒトT細胞が炎症のエフェクター細胞として働く病態モデルとして、xeno-GVHDモデルマウス(huPBL-NOGマウス)の系を用いた。このマウスに対し、ヒト化抗CD26抗体を投与することで、ヒトT細胞がマウス体内に生着していながら著明な生存期間の延長と体重減少の軽減が認められた。マウス体内でのヒトT細胞のCD26の発現を経時的に解析した結果、CD4^+ T細胞、CD8^+ T細胞ともに移植初期にCD26の発現が移植前よりも顕著に増強していたのに対し、抗CD26抗体を投与するとCD26陽性T細胞の生着が阻害されることが示された。さらに、CFSEでラベルしたヒトPBMCをマウスに移植して細胞分裂の解析を行った結果、抗CD26抗体の投与によりヒトCD8^+ T細胞の細胞分裂が優先的に抑制されることが示された。さらに、xeno-GVHDの予防と治療について、臨床応用されている共刺激分子抑制薬であるabatacept(CTL4-Ig)と比較した結果、CD26抗体はCTL4-Igと同等の予防・治療効果をみとめた。しかも、高用量のCTL4-Igでは移入細胞の生着が遅延するが、CD26抗体投与では、高用量でも生着が遅延することなくxeno-GVHDの抑制を認めた。この結果は、CD26抗体はCTLA4-Igに比べ、日和見感染症のリスクを低減しながら、GVHDの治療効果をあげる可能性を示唆する。 2.臍帯血細胞を移入したxeno-GVHDモデルマウス(huCBL-NOGマウス)において、huPBL-NOGマウスの系とは異なるxeno-GVHDを認めた。すなわち、huPBL-NOGマウスでは肝GVHDが主体であったが、huCBL-NOGマウスでは、肺GVHDが高頻度に認められた。肺GVHDは慢性GVHDにおける重要な合併症であり、ヒトリンパ球がエフェクターとして作用する肺GVHDモデルは極めてめずらしく、来年度はこのモデルを用いて、肺GVHDの予防、治療薬の探索とともに、発症メカニズムの解析を行なう予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ヒト末梢血T細胞、ヒト臍帯血T細胞におけるCD26とCaveolin-1による共刺激系の解析、xeno-GVHD抑制治療法の開発は概ね計画通りに進行しているが、樹状細胞やブロッキングペプチドの開発が遅れており、全体として、やや遅れていると自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでのin vitro解析で発見されたいくつかのシグナル経路を探索し、CD26・Caveolin-1による移植免疫寛容誘導療法の分子基盤を確立する。また、ヒトリンパ球がエフェクターとして作用し、肺GVHDをおこすマウスモデル(huCBT-NOGマウス)を用いて、慢性GVHDの重要合併臓器である肺病変の発症メカニズムの解明と治療法の開発を、CD26・Caveolin-1共刺激という分子基盤から行なう。
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