研究概要 |
われわれは消化器癌の転移・再発のマーカーを明らかするには循環血液あるいは骨髄液中に癌細胞を検出することを目的とするのではなく、癌細胞側因子と宿主側の環境因子とにおいて転移再発と明確な関連を有する遺伝子を求めるのが重要である。両面からの俯瞰的研究により転移再発機構を解明し、真の予測マーカーを求める。特に多くの遺伝子を一度に抑制しうるファインチユーナーとしての役割を担うmicroRNAは、その発現の臨床的意義が注目されており、microRNA-遺伝子pathwayの同定と機能解析が急がれる。 われわれは多施設共同研究を組み、各施設毎に倫理委員会を通過した後、消化器癌患者の骨髄と末梢血液の集積を開始した。骨髄は4つの分画(癌細胞分画、マクロファージ分画、血管内皮細胞豊富分画、全血)に分けて、microRNAマイクロアレイを施行する。転移陽性症例特異的miRについてはマーカーとしての意義を明らかにすることはもちろんのこと、標的遺伝子pathwayを決め、機能解析をすすめさらに絞り込めるマーカーを求める。 <大腸癌症例>これまでに15例の症例に対して骨髄穿刺、末梢血採取を行った。Preliminaryに実施したDukes B,C8例のアレイを実施しいくつかの有力なmicroRNAを同定した。現在データの集計中である。 <胃癌症例>胃癌転移陰性5例に比べ陽性5例で骨髄中過剰発現する遺伝子群およびmiR群を求めた。その結果、癌細胞側因子:MMP1,MT1MMPの陽性例は有意に再発例が高かった(p<0.01)。宿主側因子:GO期(癌幹細胞)へ誘導するFBXW7遺伝子発現低下症例は転移陽性例が高頻度に認め6れた(p<0.01)。転移陽性例特異的miR群についてはPCRで転移との有意相関を確認した。 miRは総数700弱で標的遺伝子を制御しており、本研究では癌幹細胞関連因子など転移関連蛋白を一度に制御しうるmiRを今後も同定していく。
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