研究概要 |
生産計画,資源の最適利用,環境汚染の最小化,通信資源の有効利用といった多くの社会的・工学的に重要な問題は,組合せ最適化問題としてモデル化されるが,現実的な計算時間で最適解を導くのは不可能とされるNP困難と呼ばれるクラスに属することが知られている.さらにこれらの多くの問題では,理論的には精度保証のある近似解を得ることすら難しい.一方,理論的な意味での解の精度保証は難しくとも,実用上は十分有効な解を得ることのできるメタヒューリスティクス解法(タブー探索,アニーリング法,遺伝アルゴリズムなどを含む)も多く提案されており,実用上は十分良い近似解を得ることができる問題も多い.本研究の目的は,メタ戦略の中でも特に,近傍探索パラダイムに基づくアルゴリズムの有用性に理論的裏付けを与えることによる.さらにはその理論をもとに,これまで職人技に頼ってきた高性能アルゴリズムの設計に見通しの良い方法論を与えることにある. 平成21年度は代表的な組合せ最適化問題である,一般化割り当て問題の局所探索法の計算複雑度について考察を行い,その結果,実験により有用性が示されている排除連鎖近傍のPLS完全性を示した.これはこの近傍系が他のより広い近傍と同等の計算能力を本質的に持つことを示唆しており,その有用性を理論的に支える結果であると言える.この他に本研究の対象となる,組合せ最適化問題であるグラフ最適化問題に関して,近似可能/不可能性について結果を得た.
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