研究課題/領域番号 |
21680001
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
小野 廣隆 九州大学, 経済学研究科(研究院), 准教授 (00346826)
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キーワード | 組合せ最適化 / 局所探索法 / メタ戦略 / 近傍探索 / 近似アルゴリズム / NP困難・完全 / PLS 完全 / グラフ最適化 |
研究概要 |
生産計画,資源の最適利用,環境汚染の最小化,通信資源の有効利用といった多くの社会的・工学的に重要な問題は,組合せ最適化問題としてモデル化されるが,現実的な計算時間で最適解を導くのは不可能とされるNP困難と呼ばれるクラスに属することが知られている.さらにこれらの多くの問題では,理論的には精度保証のある近似解を得ることすら難しい.一方,理論的な意味での解の精度保証は難しくとも,実用上は十分有効な解を得ることのできるメタヒューリスティクス解法(タブー探索,アニーリング法,遺伝アルゴリズムなどを含む)も多く提案されており,実用上は十分良い近似解を得ることができる問題も多い. 本研究の目的は,メタ戦略の中でも特に,近傍探索パラダイムに基づくアルゴリズムの有用性に理論的裏付けを与えることによる.さらにはその理論をもとに,これまで職人技に頼ってきた高性能アルゴリズムの設計に見通しの良い方法論を与えることにある. 平成23年度の研究は(1)NP困難なグラフ最適化問題の近似アルゴリズム設計, (2)グラフらべリングにおける解再構成問題について取り組んだ.前者は局所最適性を中心に,後者はグラフ問題における2つの解構造の局所的な遷移可能性の計算複雑度を中心としたものである.(2)では特に,2つのグラフラベリングを,ラベルの実行可能条件を保ちつつ一部を変化させていく設定の計算複雑度解明を対象としており,一般にはこれがPSPACE完全であること,また限定した設定では多項式時間でこれが可能であることが判明した.このことはこの種の問題に対して自然な局所探索アルゴリズムが対象とする解空間が非常に複雑な構造を持つことを示唆するものといえる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
「研究実績の概要」欄で述べたように,当初明確には意識されていなかった解再構成問題の困難性に関する結果が得られたこと,また正攻法的なグラフ最適化問題を中心とする計算困難問題に対する近似可能性・不可能性の結果が数多く得られたことによる(業績参照)
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今後の研究の推進方策 |
上述のように,当初想定していた「局所探索スキーム」に対し,「解再構成」のスキームを入れることにより,新たな視点が加わった状態にある.ただし,解再構成問題のスキームでは一般的には多くの局所構造変形が高い計算量を要することがわかりつつある.これに対し,妥当な制限により,複雑性と計算可能性のトレードオフをとることができないか調査する方向で研究を進めたい.
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