研究概要 |
生産計画,資源の最適利用,環境汚染の最小化,通信資源の有効利用といった多くの社会的・工学的に重要な問題は,組合せ最適化問題としてモデル化されるが,現実的な計算時間で最適解を導くのは不可能とされるNP困難と呼ばれるクラスに属することが知られてい る.さらにこれらの多くの問題では,理論的には精度保証のある近似解を得ることすら難しい.一方,理論的な意味での解の精度保証は難しくとも,実用上は十分有効な解を得ることのできるメタヒューリスティクス解法(タブー探索,アニーリング法,遺伝アルゴリ ズムなどを含む)も多く提案されており,実用上は十分良い近似解を得ることができる問題も多い. 本研究の目的は,メタ戦略の中でも特に,近傍探索パラダイムに基づくアルゴリズムの有用性に理論的裏付けを与えることによる.さらにはその理論をもとに,これ まで職人技に頼ってきた高性能アルゴリズムの設計に見通しの良い方法論を与えることにある. 平成24年度の研究は(1)NP困難なグラフ最適化問題の近似アルゴリズム設計, (2)グラフらべリングにおける解再構成問題, さらに(3)グラフ独立集合における解再構成問題について取り組んだ.(1)では複数のグラフ最適化問題をグラフ辺の向き付け問題として扱う枠組みの提案と,一般開放としての近似解法の提案,(2),(3)ではグラフ問題における2つの解構造の局所的な遷移可能性の計算複雑度を中心とし,研究に取り組んだ.特に(3)は(1),(2)を通して得られた,グラフ独立集合における解再構成問題の多項式計算時間可解性,計算困難性について取り組んでおり,独立集合のサイズ・グラフの次数に関してこれらが固定パラメータ計算可能であることを導いた.これらはいずれも組合せ最適化問題における解空間の近接性と関連しており,より有効な探索アルゴリズム設計のための十分条件を与えたと言える.
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