研究概要 |
本年度の研究成果は以下の通りである. (1) ジェネリクスのあるオブジェクト指向言語を対象とした静的・動的型付け融合の理論の構築:伊奈・五十嵐によって行われた,オブジェクト指向言語に対する静的・動的型付け融合の予備的研究である,Featherweight Javaに対する漸進的型付けの計算体系を,ジェネリクスを扱えるように拡張し,拡張体系が(部分的)安全性などの諸性質を満たすことの数学的証明を行った.これにより,漸進的型付けの理論が最新のJava言語に適用できるようにする,この結果については国際ワークショップSTOPで論文発表を行った. (2) 部分型検査問題の研究:動的検査の一例であるキャストに伴なう部分型検査が,そもそも決定可能であるかという問題について研究を行った.残念ながら決定可能性についての結論は出なかったが,既存の部分型検査の半決定手続きをJava言語特有の仮定のもとで見直すことで,より多くの入力について停止する改善された半決定手続きの構築に成功した.この結果については現在論文を準備中である. (3) オブジェクト指向言語のための型理論の深化:自己参照のための型self typeをジェネリクスを用いたプログラムでより有効に使えるよう拡張を行い,self type constructorsの理論を構築した.これにより,汎用的データ構造を扱うプログラムに,より適切な型表現を与えることが可能になり,安全性を損わずに,再利用性を向上することが可能になった.この結果については,オブジェクト指向プログラミング分野でトップクラスの国際会議であるACMOOPSLAで論文発表を行った.
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