研究概要 |
本年度の研究成果は以下の通りである. (1)ジェネリクスのあるオブジェクト指向言語を対象とした静的・動的型付けを融合する理論の構築:昨年度までに行った研究で,言語の中核部分の仕様が固まっていたが,その(部分的)安全性の証明に誤りが見つかったため,仕様の再検討,修正,(部分的)安全性の再証明を行った.この結果については,論文にほぼまとめ終わっている.平成23年度初頭に投稿予定である.この過程で,予定通りペンシルヴァニア大のBenjamin Pierce教授を訪問し,言語設計についての議論を行った. (2)オブジェクト指向言語のための型理論の深化:自己参照のための型self typeの理論について,self typeを使ったプログラムの柔軟性をより高めるための研究を行っていたが,これに対し考察を深めた結果を論文にまとめ国際雑誌に採択された. (3)多相的契約の理論:ソフトウェア上のより正確な性質を静的検査と動的検査を組み合わせて保証するための理論として提唱されていた「契約(ソフトウェア・コントラクト)」に基づく計算理論を多相的型システムと融合させた理論を構築した.これにより,プログラマが定義する抽象データ型上の契約をプログラム上で表現することが可能になった.この成果は,プログラミング言語の国際会議ではトップクラスのESOPという会議で発表された.
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