平成21年度では、Ruge、StubenらのAMGアルゴリズムに基づいた陰的マルチグリッド法プログラムを開発した。本プログラムはCRS(Compressed Row Storage)形式の疎行列データを入力とし、陰的マルチグリッド法により得られる拡大係数行列および補間関数を出力するプログラムである。本プログラムにより様々な応用分野において生ずる連立一次方程式の陰的マルチグリッド化を簡単に行うことが可能となる。次に、本プログラムに対して行列データベース等より入手したテストデータを適用し、その有効性について検討を行った。その結果、陰的マルチグリッド法において定常反復法を利用した場合、通常のマルチグリッドVサイクルと同一の収束性が得られることが確認された。さらに、得られた拡大連立一次方程式と線形ソルバライブラリを組み合わせることにより、簡単に各種のマルチレベル型前処理付き反復法を構築できることを示した。 次に本研究では、拡大連立一次方程式に対して利用可能な分散メモリ形式に対応したハイブリッド並列処理型ICCGソルバを開発した。本ソルバはこれまでにライブラリ化されていないマルチプロセス方式とマルチスレッド方式を併用可能な分散型ICCGソルバで元の係数行列の次元数よりも大きい行列を扱う陰的マルチグリッド法に適合するソルバである。本並列ICCGソルバの陰的マルチグリッド法における有用性については平成22年度以降に検証する予定である。
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