研究概要 |
本研究の目的は,先端シリコン半導体集積回路(LSI)設計において,重大かつ深刻な問題となっている製造プロセスバラツキや温度変化によるLSIの特性変動を,自律的に動作補正が可能な集積回路技術を創出することにある.LSIの特性,特に近年の超低電源電圧で動作する半導体集積回路の特性は,第一次的に,その主構成要素であるMOSトランジスタのしきい値電圧により決定されるといえる.しかし,そのしきい値電圧は,製造プロセスバラツキや温度変化により変動し,LSI特性を大きく劣化させる問題がある.これを解決するために,回路の外的要因に起因する不可避なしきい値電圧変動をLSI上のオンチップで検出し,その検出信号を直接オンチップで用いる動作補正技術の基盤構築を行うことを検討する.本年度は,特に,しきい値電圧の変動をLSI上のオンチップで検出するための集積回路技術アーキテクチャの検討とデバイス測定評価,ならびにこれを利用したアナログ集積回路の動作補正技術アーキテクチャの検討を行った.しきい値電圧のオンチップ検出に関しては,LSIデバイスの作製,評価を通じて,事前検討の回路シミュレーション結果と同等の測定評価結果を得ることができ,提案アーキテクチャの妥当性,有効性を確認することができた.また,回路の消費する電力は0.5μW以下の超低電力で実現することができ,電力オーバーヘッドを極限まで小さくできることを確認した.本年度の成果により,オンチップ補正技術の構築に向けた基本回路技術の確立の見通しを得た.また,構築したオンチップ検出回路を利用したアナログ回路の動作補正技術に関しては,電圧制御発振器への適用を検討した.提案回路を用いることで周波数のバラツキ変動を大幅に抑制することが可能である見通しを得た.
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