研究概要 |
本研究では,ICTを活用した高精密農業に必要なデータ収集インフラを配備する上で大きな課題となっている多様なセンサ類の相互接続と高解像度センシング,異種センサデータ間の複雑な因果関係をリアルタイムに解析するデータストリーム処理を可能とするマルチベンダセンサグリッドの開発を目指した.これまでに引き続き,マルチベンダセンサグリッドを実現するシステム体系に従って研究開発を実施した.1.多数のノード設置や高頻度なデータ収集の実現と必要な解像度の分析に関しては,夏の大規模台風の影響で施設園芸環境の屋根が破損し復旧に時間がかかるということから,RPLを同期型に改良することで省電力に周期データ収集可能な通信プロトコルの研究開発と実証実験を大学構内で実施した.既存RPLに比べ劇的に省電力化を実現できることを示し,IPSJ全国大会にて学生奨励賞を受賞した.2.異種ノード間の相互連携と分散データストリーム処理に関しては,多種多様なセンサデータをリアルタイム処理しつつ蓄積するアーキテクチャを研究開発した.PUCCプロトコルの採用による高可用性ならびにセンサデータの差異吸収と,DSMSとDBMSの連携による高効率の大量データ処理機能を持つ分散型センサデータ管理システムを開発し,負荷試験の結果,DBMSやNoSQLのみのシステムに比べ劇的な性能向上を期待できることを示した.研究成果は国際会議で発表しただけでなく国内論文誌投稿中である.3.ユーザインタフェースの提供に関して,Webインタフェースを用いて異種ネットワーク上のデバイスを連携させる仕組みを研究開発した.研究成果は国内外で発表しただけでなく国内論文誌へ採択された.4.マルチベンダセンサグリッドの評価に関して,時間的,空間的な変化をWebブラウザで閲覧可能とする仕組みを開発しただけでなく,小型ヒートポンプと組合せることで温度と湿度を連動制御する仕組みを研究開発した.農業のエキスパートからのノウハウを形式知化する基礎環境を開発し,どのような判断がどのような意味を持つか定量的に示すべく実証実験を繰り返した.過酷な環境での安定稼働に課題があるが,以上に関係する研究発表を数件実施し好評を得ている.今後,本研究成果を基礎にコンポーネントベースへの拡張を考えている.
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