研究概要 |
本研究の目的は,テレロボットの身体性を導入することによって社会的テレプレゼンスを支援する能力が強化された映像コミュニケーションシステムであるテレロボティックメディアの開発である,平成21年度は,テレロボットが有する様々なインタラクションモダリティのうち,視点の移動に着目した研究を実施した.視点移動が社会的テレプレゼンスを強化する効果を持つことはテレロボットを用いた実験によって実証済みであるが,その原因としては,移動が原因で生じる見え方の変化である運動視差の他に,単純な相手の映像の拡大が考えられる.単に相手の映像を拡大するだけであれば視点を移動させる必要は無く,通常のズームインによって可能である.そのため,視点移動の必要性を調べるために,運動視差をともなう視点移動による映像の拡大と,運動視差をともなわないズームインによる映像の拡大とを比較した.また,映像の拡大が視点移動によるものなのか,それともズームインによるものなのかを被験者がどの程度判別しているのか調査することによって,運動視差の知覚が意識的なものなのかどうかを調べた.このような実験を実施するためには,被験者がカメラを操作する必要のないシステムが必要となる.そこで,ユーザのディスプレイへの接近を距離センサーで捉え,それに同期して遠隔地のカメラが自動的に前進するメディアスペースを構築して使用した.実験の結果,視点移動によって映像を拡大する場合にだけ,社会的テレプレゼンスを強化する効果が確認された.さらに,運動視差の知覚は潜在意識によるものであることも判明した.
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