研究概要 |
本研究の目的は,テレロボットの身体性を導入することによって社会的テレプレゼンスを支援する能力が強化された映像コミュニケーションシステムであるテレロボティックメディアの開発である.平成22年度は,テレロボットが有する様々なインタラクションモダリティのうち,身体の移動に着目した研究を実施した.遠隔地の相手の身体移動を強調する方法として,映像表現を用いて行う方法以外に,相手が映っているディスプレイを物理的に移動させる方法も考えられる.そこで,以下のような2つの比較実験を実施した.まず,ディスプレイに映っている遠隔地の相手の前後の移動に合わせて遠隔地側のカメラをズームイン・ズームアウトさせることで,映像表現によって相手との対人距離の変化を強調するシステムを開発した.そして,相手の前後移動の有無とズームイン・ズームアウトの有無による2要因2水準4条件の比較実験を行い,前後移動による身体映像の拡大縮小,ズームによる身体映像の拡大縮小,およびそれらの同期が社会的テレプレセンスにもたらす効果を観察した.さらに,ディスプレイに映っている遠隔地の相手の前後の移動に合わせてディスプレイを前後に移動させることで,ユーザとディスプレイの間の物理的な距離の変化によって相手との対人距離の変化を強調するシステムを開発した.そして,相手の前後移動の有無とディスプレイの前後移動の有無による2要因2水準4条件の比較実験を行い,映像上の身体移動,物理的な身体移動,およびそれらの同期が社会的テレプレセンスにもたらす効果を観察した.以上の2つの実験の結果,ズームイン・ズームアウトには,相手の前後移動と同期する場合にのみ社会的テレプレゼンスを強化する効果のあることが確認された.これとは異なり,ディスプレイの前後移動には,相手の前後移動と同期する場合でもしない場合でも,社会的テレプレゼンスを強化する効果のあることが確認された.
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