研究概要 |
本研究は,道路交通,都市輸送,窓口,病院,飲食施設など,人々の行動の多くは社会に設置されたサービスインフラを利用する.これらの状況をゲーム論的にモデル化すること,およびナッシュ均衡・パレート最適解の観点から分析することを目的としている.今まで,モデルの基礎に巡回セールスマン問題を採用し,「動的巡回セールスマン問題(Dynamic Traveling Salesman Problem)」という新たなインフラ利用モデルを提案した.ここでは,各セールスマンは従来のTSPと同様に都市の巡回時間の最小化を目的とするが,各都市間の路を共有しており,同時に複数のセールスマンが同じ路を利用した際にはその巡回時間が利用人数に応じて長くなるモデルである.セールスマンが単独の時は従来のTSPと一致し,また各セールスマンは巡回時間が動的な以外は従来のTSPと同様の最適化手法がそのまま利用できる.解構造の分析および最適化手法に従来TSPの研究成果を存分に利用できる利点がある.本年度の成果として,セールスマンの数を変動させた際の組み合わせの複雑性と解構造の関係,問題の大規模化へ向けた実時間での探索手法の構築,ジョブショップ問題やフローショップ問題などへの適用の可能性,および分散的最適化における社会の公平性などについて議論が進んでいる.具体的には,ナッシュ均衡が存在する意義,price of anarchyの観点からの公平性の議論などを行った.
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