研究最終年度である本年度では,今まで得られた研究成果を具体的な社会モデルに応用すべく,デマンドバスのスケジュール最適化問題を定式化し,行動調整モデルの応用を試みた.いくつか仮想的な都市の交通網を設定し,どのような条件でデマンドバスのスケジュール最適化が有効であるかについてシミュレーション実験を行った.その結果,バスの台数やデマンドの絶対数,分布などに応じてデマンドバスが有効であるケース,有効ではないケースが存在することがわかった. また,大規模行動調整モデルへと研究を発展させるため,大規模エージェントモデルの開発について研究を行った.そこでは,数万~数十万規模のエージェントが行動を行う際の相互作用を効率的に実装するためのアルゴリズムについて研究を行った.こちらについては,研究の最終年度と言うこともあり予備的な調査ではあったが,オープンストリートマップを利用した現実データに基づくエージェントシミュレーション,およびHadoopを利用した効率的なシミュレータ設計について検討を行った. さらに,研究成果を現実の社会問題へ適用するために,スマートシティと行動調整モデルの関連性について考察を行った.多くの人々の行動を最適化することによって社会最適化を実現し,社会に存在する情報や資源を効率的に利用することで混雑のない,利便性が高い社会を実現するための方法論について考察を行った. これらの成果を学会等で発表することで,マルチエージェントシステムと行動調整ステムの研究分野の発展に貢献した.
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