研究概要 |
本研究は等身大ヒューマノイドによる柔軟物の認識操作手法の確立を目的とし,コンピュータアニメーション分野で研究が進む柔軟物モデリングと高速シミュレーション技術を基盤とした形状認識法と操作計画法の各ソフトウェア・アルゴリズムの構築と,すべり覚がわかる指先と掌関節を特徴とする多指ハンド,ズーム機能による高視力ステレオ視覚,テクスチャのない布の距離情報を取得するための投射型三次元視覚のハードウェアの研究を行い,これらのソフト,ハード両面の要素技術を統合して等身大ヒューマノイドによる柔軟物認識操作行動を実現する.柔軟物タスクにおける基本動作として,タオルをつかみ展開する,洗濯物をたたみハンガーにかける,衣類を人に着せボタンをかける,を取り上げる.各年度舞に,この基本動作のシミュレーション及び実ロボットに実装し要素技術の検証と修正を行う.最終年度にこれらを組み合わせた統合システムを構築し,家事・介助支援タスクを通じて開発した各手法を評価する.平成23年度は代表的な衣類の操作である,たたむ,着せる,あるいはボタンを掛けるといった複雑な手順を含む動作を取り上げる.このような複雑柔軟物操作では,これまで研究してきたタオル等の簡単形状柔軟物の認識行動手法に加えて,視触覚を用いた物体操作,並びに複雑な手順のプランニング法への展開が必要になるため,これを本年度明らかにする研究項目とした. ・赤外光カメラと可視光カメラを用いた色付き三次元視覚認識:テクスチャのない布に対する距離計算を可能にするため,急速に実用化が進む超小型プロジェクタを利用してランダムパターンを赤外光投影し赤外線カメラで距離を計測するとともに,可視光カメラで対象の色情報を獲得できるシステムをセンサシステムを構築した. ・多指掌軸ハンドによる物体把持計画:多指掌軸ハンドを用い任意形状の対象物に対する把持計画を,入力となる三次元視覚情報から,フォースクロージャを考慮した把持姿勢探索,ならびに,その対象物を持ち替え操作するための最適なシーケンスを出力し,実際の等身大ヒューマノイドロボットを用いて,実証実験を行うまでのシステムを構築した.これにより,どのような形状の対象物体でも任意の状態に遷移させるための把持と操作を生成できる技術を確立した. ・複雑操作の動作計画:動作計画では,ロボットの動き(a)に対する環境の変化(e)の情報が必要になるが,布操作のような複雑な対象物の場合には失敗する可能性がある.そこで,ある動き(a)に対する環境の変化を成功した場合(e')と失敗した場合(e'')に分けて全ての可能性を出力しこれをまとめた動作遷移モデルを生成し,これにより現在の状態(S)から環境の変化(e)を繰り返し目標状態(E)に遷移するための動作(a)の系列を,途中で失敗した場合も含めて対応できる動作実行制御機構の構成法を明らかにした.
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