研究概要 |
本研究では,全身を柔軟な触覚センサ外装を備えたヒューマノイドにおいて,多様な接触情報を検知可能なハードウェアと,全身からの大量のセンサ情報を元に行動学習を行うソフトウェアの構成法を明らかにする.平成23年度においては,主に,(1)身体負荷への注意制御に基づく自律馴染み反応システムの構築し,(2)大量の触覚情報データへの対処のための感覚情報空間のオンライン粗密化手法の改良と実機検証を行った.また,(3)柔軟密着タスクと身体負荷低減のための馴染み作用の同時学習系の構築し,(4)等身大ヒューマノイドでの全身多軸肉質触覚センサ外装の構成法を明らかにした.交付申請書では,更に,高応答自律反応系の構築を行う予定であったが,他の項目の(2)や(3)といった本質的な部分の遂行に予想よりも時間がかかったため,そちらを優先するものとした. 具体的な成果としては,1)全身のセンサ情報を,瞬間的な「痛覚」と時定数を伴う「疲労」という二つの観点から評価することで身体負荷を低減する自律馴染み反応を通常のタスク動作のバックグラウンドで実行される並列監視評価構造を用いて構築する手法を明らかにした,2)22年度にシステムのプロトタイプを設計した感覚情報空間のオンライン時空間粗密構造化アルゴリズムを実際の分布触覚センサシステムに適用し,多軸柔軟触覚センサに適用できるよう拡張を行った.更に3)柔軟密着タスク実行中のタスク達成度を逐次的に評価しながら,身体負荷低減馴染み反応の作用を自律的に調節する同時学習系を強化学習の一手法であるActor-criticのフレームワークを拡張することで構築する方法を明らかにした.また,これらの成果の展開可能性を検証するための4)等身大ヒューマノイドでの全身多軸触覚センサ外装を開発し,その構成法を明らかにした.これらの成果により,本研究の目的の本質的な部分は達成することができたといえる.
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