研究概要 |
エピソード記憶に代表される海馬記憶を実現するための動的な皮質問ネットワークが創発するメカニズムを解明することを目的として,脳波とfMRIの同時計測を実施する.平成21年度においては,海馬記憶に関連する課題として風景写真を観察中の脳波とfMRIの同時計測にもとづき,海馬記憶に関連する皮質ネットワークを同定した.その結果,前頭からのシータ波の発生タイミングにおいて,前頭前野内側面,前頭眼野,高次視覚領野および海馬傍回場所領域の反応が発生することが明らかになった.研究代表者らの実施した従来の脳波研究において,前頭からのシータ波の特定の位相において前頭眼野付近および高次視覚領野付近のガンマ波パワーが増大することが示されており,前頭前野内側面のシータ波により,前頭眼野および高次視覚領野の情報統合が実現されることで,海馬傍回での場所記憶が実現されていることを示唆している.さらに本研究課題では,神経の振動子ダイナミクスの協調により認知処理に必要な皮質ネットワークが動的に形成されていることを示すために,特定の神経活動が発生している際の皮質活動を数百ミリ秒の精度の実時間で妨害する技術を開発する.本年度においては,脳波とfMRIの同時計測にもとつく実時間干渉型計測システムの開発を開始した.脳波とfMRIの同時計測においては,MRIの高磁場に由来するアーチファクトが計測する脳波に重畳する問題が発生する.従来の脳波とfMRIの同時計測においては,fMRIの撮像に由来するアーチファクトを事後的に除去することにより,脳波の時系列データを復元する方法を用いている.本研究ではfMRIと同時計測している最中の脳波から,実時間でアーチファクトを除去することで,特定の脳波成分が発生した際に妨害刺激を呈示するシステムを目指している.そこで,実時間でのアーチファクト除去を実現可能なシステム構築を実施した.
|