研究概要 |
ヒトは時々刻々と変化する複雑な環境の中で,創発的に状況依存的な判断を実現している.我々の脳内には特定の機能を司る部位が局在しているものの,どこか一つの皮質部位のみの活動により機能が創発するわけではない.単純な作業をする際においても複数の脳部位の協調活動を必要としている.神経の振動子ダイナミクスの協調により認知処理に必要な皮質ネットワークを動的に形成していると考えられているものの,従来の脳機能イメージング技術では,特定の神経活動が発生している際の皮質活動を数百ミリ秒の精度の実時間で妨害する技術は開発されていない.そのため,数百ミリ秒の動特性を有する過渡的な神経の振動子ダイナミクスに関連して真に情報統合がされているか否かの検証は残された問題である.そこで,特定の皮質において脳波活動が発生した際に妨害刺激を呈示するシステムを目的として,その基幹技術となる特定の皮質活働に対応した頭皮脳波分布を決定する手法を,脳波とfMRIの同時計測にもとづき構築することを目指した. 平成22年度までに,fMRIと同時計測中のMRI撮像由来のアーチファクトをリアルタイムに低減する技術を確立したとともに,「振動子ダイナミクスによる脳内情報統合メカニズムの解明」を目指した心理実験課題を構築した.平成23年度においては,目標とするシステムの基幹技術として,特定の皮質部位における脳波活動を再構築する技術の開発を実施した.この技術においては,頭皮上で計測した脳波活動をもとにして,fMRIで同定した皮質の空間位置で脳波活動を再構築する技術である.さらに,平成22年度までに構築したヴァーチャルリアリティを用いた物-場所記憶課題遂行時の脳波とfMRIの同時計測を実施した.これらの研究成果は,目標とするシステムの基幹をなす技術である.
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