本年度は、Fynを介した神経系細胞の形態制御の分子基盤を明らかにすることを目的として、申請者がFynの基質として最近同定した新規Rho GTPase-activating protein(GAP)分子であるp250GAP(中澤ら、J Neurochem 2008 ; Mol Biol cell 2003 ; Biochem Biophys Res Commun 2003)、及びTCGAP(中澤とLiuら、J Biol Chem 2006)の神経系細胞の形態形成における機能の解析を行った。まず、初代培養神経細胞を用いて、TCGAPの神経細胞の形態制御への関与を検討したところ、TCGAPの過剰発現によって神経突起の形態に異常が見いだされた。またTCGAPノックダウン細胞の形態には大きな異常が見られなかった。また、TCGAPによる神経細胞の形態制御のメカニズムの解明を目的として、TCGAPの会合分子の検索をTCGAPの全長を用いたyeast-two hybrid screeningを用いて行い、細胞骨格関連遺伝子や神経栄養因子の受容体などを同定した。以前の解析によって、p250GAPは神経細胞のスパインの形態を調節していることを明らかにしている。今年度は、p250GAPのチロシンリン酸化が、そのステップに関与しているかどうか、変異体の発現などの手法で検討したところ、p250GAPのチロシンリン酸化と形態制御の関連性は見出すことができなかった。本年度の研究によって、TCGAPの神経細胞の形態制御のメカニズムの一端を明らかにすることができた。
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