研究課題
本年度は、Fynキナーゼを介した神経細胞の形態制御の分子基盤の解明をさらに推進することを目的として、申請者がFynキナーゼの基質として最近同定した新規Rh GTPase-activating Protein(GAP)であるTCGAP(中澤、劉ら、J Biol Chem,2006)に注目して解析を行い、以下の結果を得た。(1)TCGAPは外界からの様々な刺激によってチロシンリン酸化されることを明らかにした。(2)TCGAPは脳・神経系細胞に発現している受容体様分子の細胞膜への輸送を制御していることを明らかにした。(3)TCGAPはspine形態のみならずdendriteの形態も制御していることを明らかにした。また、その分子基盤の解析を推進した。(4)TCGAP欠損マウスは外見上顕著な異常は観察されない。TCGAP欠損マウスの行動解析を行ったところ、精神疾患関連の行動に異常がみられることが明らかになった。(5)TCGAPはそのN末端に、タンパク質輸送に関連しているPX領域を持つユニークなRhoGAPである。PX領域をもつvariant、PX領域をもたないvariantをin uteroエレクトロポレーションを用いて、発達期の神経細胞に発現させることによってPX領域の機能解析を行い、その機能の一端を明らかにした。(6)TCGAPのホモログであるp250GAPとTCGAPとの関連性の解析を推進し、神経細胞の形態形成では、一部分overlapした機能を持つことを明らかにした。本年度の研究によって、Fyn/TCGAPシグナリングによる神経細胞の形態制御の分子メカニズム、及びTCGAPが脳高次機能を制御していることを明らかにすることができた。
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http://researchmap.jp/nakazawa1972/