本研究では、Phenotype-drivenとGene-drivenの二つのENUミュータジェネシスアプローチにより、てんかん関連遺伝子に突然変異を有するてんかんモデルラットを作製している。 1) Phenotype-driven ENU mutagenesis E0739とE1897の二つの自然発症てんかんラットにういて、ポジショナルクローニングアプローチを行っている。二つのラット系統にういてBN/SsNSlcとの交配によりそれぞれ約100匹の戻し交雑仔(BC1)を作製した。作製した戻し交雑仔において、てんかん様発作あるいはその病態特性を評価し、全染色体上の約50個の多型SSLPマーカーを用いてゲノムスキャンを行った。E0739系統についてはラット第4染色体上に、E1897系統については第5染色体上にマッピングすることに成功した。現在、候補遺伝子の検索を行っている。 2) Gene-driven ENU mutagenesis LGI1とMASS1の二つのてんかん遺伝子にういて、ラットENUミュータントアーカイブから標的遺伝子変異ラットの作製を行っている。既にL385Rミスセンス変異を発見しているLGI1遺伝子については、対応するENUミュータントアーカイブの凍結精子をF344/NS1c未授精卵に顕微授精し、Wistarラット偽妊娠雌に移植することにより産仔を得た。得られた産仔の約半数にLGI1遺伝子L385Rミスセンス変異を確認した。現在戻し交配および兄妹交配により本ラットの系統化を行っている。 MASS1遺伝子については、EARドメインや、ラミニンGドメイン領域を増幅する10個のプライマーを合成した。KURMA 5000頭分のゲノムDNAを対象に、MuT-POWER法によりスクリーニングを行い、点突然変異を検索した結果、T3336CとC10066Aの二つの変異を発見した。MASS1遺伝子の塩基配列情報から、これら変異はサイレント変異とミスセンス変異を引き起こしており、コンピュータ解析からはミスセンス変異は蛋白質機能に影響を及ぼさないと予測された。
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