Phenotype-drivenおよびGene-driven二つのENUミュータジェネシスアプローチから、てんかんモデルラット系統の作製を行った。 1) Phenotype-driven ENU mutagenesis:E0739とE1897の二つの自然発症てんかんラットについて、ポジショナルクローニングアプローチにより原因遺伝子の同定を行った。E0739系統については、ヒトEpisodic ataxia type1 (EA1)の原因遺伝子である電位依存性カリウムチャネルKcna1において、S309Tミスセンス変異を同定した。E0739ラットを利用することで、S309T変異によるKv1.1チャネル機能異常および個体レベルでのEA1神経病態発症メカニズムの一端を明らかにした。E1897系統については、第5染色体上に約2M-bpにまで候補領域を狭め、次世代シークエンサーによるゲノムシークエンスにより、酸化ストレスに関与する遺伝子においてアミノ酸置換を発見した。E1897ラットは、4-5週齢にけいれん発作を発症し、18-24週齢に腎不全を発症した。 2) Gene-driven ENU mutagenesis:ヒト常染色体性優性外側側頭葉てんかんADLTEの原因遺伝子LGI1について、ENUミュータントアーカイブKURMAからLgi1遺伝子変異(L385R)ラットを開発した。ヘテロ型L385R変異ラットは、有意に音刺激誘発けいれん感受性を示すことを発見した。この音刺激誘発けいれん感受性の発症メカニズムを解明するために、海馬、大脳皮質においてDNAマイクロアレイ解析、神経興奮マーカーであるFos免疫染色解析を実施することで、てんかんの焦点形成機序の一端をを明らかにした。 本研究により作製された3つのてんかんモデルラットは、ナショナルバイオリソースプロジェクト「ラット」に寄託した。
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