研究課題
非筋細胞内アクトミオシン集合体のストレスファイバは、細胞内メカノセンサとして働いている。メカノセンサとは、細胞が置かれた環境の「硬さ」など力学的情報を感知し、それを生化学的情報へと変換する役割を果たす分子のことである。この機能は細胞が環境に適応するために不可欠なものである。本研究はストレスファイバが動的に構造を変えながらメカノセンシングする分子機構を解明することを目的としており、本年度は、力学的刺激によるストレスファイバの消失機構を調べた。従来、ストレスファイバ内の非筋II型ミオシンにMgATPが結合すると、これを加水分解し、そこで得たエネルギを利用して短縮運動することが知られている。本研究では、生理的濃度のMgATPの存在下ではこの短縮が起こるだけではなく、非筋II型ミオシンがアクチンフィラメントから解離して、その結果ストレスファイバが消失することを明らかにした。ここで、MgATP濃度が低い時には短縮だけが起こるのに対して、高い濃度では消失だけが観察された。最近の研究で、非筋II型ミオシンがアクチンフィラメントに沿って前方に押されると、アクトミオシン間の結合時間が短くなることが報告されている。このことから、ストレスファイバは等尺性収縮が保たれている時には安定して存在できるが、外部環境から圧縮負荷、すなわち非筋II型ミオシンを急速に前方へ押し込む力が与えられると、アクトミオシンの結合時間が減少し、その結果、両者が解離するという分子メカニズムが浮かび上がった。このように、力学的刺激を受けたストレスファイバの消失はMgATPの結合だけで実現されることを示した。また、この消失にはアクチン単量体への分解を伴わず、コフィリン等の切断・脱重合タンパク質が関与しないことも示唆された。このように、ストレスファイバがメカノセンサとして働く分子メカニズムの一端が明らかにされた。
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Biochemical and Biophysical Research Communications (未定, 印刷中)
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http://db.tohoku.ac.jp/whois/detail/87bca4b801774ad6e093d0079e81b956.html