医療診断技術として広く普及している磁気共鳴イメージング(MRI)が苦手とする測定体の一つに、金属含有体がある。本研究では、MRIの磁場強度を従来の10000分の1のレベルまで下げることで、金属含有体の画像検査を可能にするMRI装置を提案し、その基盤技術開発を行う。平成21年度は、提案装置の基本設計を行った後、主要な構成要素である超伝導量子干渉計(SQUID)、液体ヘリウム用デュワー、磁気シールドケースを組み立て、SQUIDの動作確認を行った。本開発では、高い測定感度を得るため、液体ヘリウム温度(4.2K)で動作するdc-SQUIDを使用する。これを1チャンネル、デュワーに収めるとともに、駆動回路に接続した。デュワーは、磁場の歪みや熱雑音の発生を抑えるために、繊維強化プラスチックで制作し、液体ヘリウムの保持日数は3日間以上であることを確認した。磁気シールドケースは、厚さ2mmのパーマロイを2層と銅箔により構成し、シールド性能は静磁場に対して1/300、周波数1kHzの交流磁場に対して1/10000を達成した。デュワーとコイルー式を収めるのに十分なスペースを確保するため、幅と奥行きを1m、高さを1.5mとした。さらに、デュワーや測定試料を固定するため、アルミ製のフレームを組み上げ、磁気シールドケース内に設置した。これらが完成した後、各配線の導通チェックを行った。また、室温および液体ヘリウム中において、SQUID素子の電圧-電流特性および電圧-磁場特性の測定を実施した。
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