本研究は生活習慣病健診チップ開発を最終目的として分子鋳型の優れた分子認識能を利用したの非侵襲計測法の開発を目指すものである。分子鋳型を電極上に形成し、コレステロール濃度を電気信号として取り出すことで従来法に代わる新しい計測法の確立を目指した。マトリックスとして単分子膜を用いて分子鋳型を電極上に形成し、分子鋳型と目的物質の分子間相互作用を利用することで分子認識を可能にした。皮膚からの抽出成分に含まれるコレステロール、スクワレンやトリグリセリドなどの物質について、分子鋳型による電気化学計測を行った。いずれについても、電気化学的に不活性であったため酸化還元マーカーを用いて測定を行った結果、それぞれに顕著な応答が得られた。また、電極チップを構成する基材としてPETやポリイミドなどのプラスチックフィルムを用い、プラスチックと結合部位を有する金ナノ粒子を用いてめっきすることで電極部を形成した。チップのディスポーザブル化の観点から、如何に得られる金皮膜を薄膜化するかについても検討した。その結果、約40nmの薄膜化に成功した。得られた薄膜は充分な導電性を示すだけでなくセンサ応答が増大する効果が得られた。これは、電極表面において、金ナノ粒子による微細構造が形成されたため電流応答が増幅されたものと考えられる。以上の結果に基づいて、コレステロール他、それぞれを目的物質とした分子鋳型を電極チップに形成することが可能となった。さらに、目的物質ごとに異なる酸化還元マーカーを用いることで、一括計測が可能であることが示唆された。 これらの成果について、学術誌への掲載(Anal.Sci.誌、米国電気化学会誌)、国際学会(EUROanalysis、ICASなど)、国内学会(化学センサ研究会など)での発表を行った。
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