本研究では、幹細胞の体内動態を制御する因子を固定化した、幹細胞の動員・増幅能をもつ生体材料からなる"体内インキュベータ"を創製することである。平成21年度に引き続き、核酸アプタマーを作製するために、細胞接着分子であるフィブロネクチン、ラミニンあるいは細胞増殖因子の一つである幹細胞増殖因子について、RT-PCR法による遺伝子クローニングを行い、大腸菌でタンパク質の発現を確認した。一方、近年、幹細胞の増殖・分化が材料の軟らかさで変化することが明らかにされつつある。そこで、平成22年度は、幹細胞の多孔質材料として、刺激に応答して軟らかさなどの物性が変化する生体材料に関する研究を行った。糖応答性をもつフェニルボロン酸残基を導入したゼラチンハイドロゲル、あるいは間葉系幹細胞の骨分化にともなって発現するアルカリ性フォスファターゼの酵素刺激に応答するリン酸基を導入したハイドロゲルを設計し、刺激応答性、ならびに軟らかさを評価した。さらに、得られた刺激応答性ハイドロゲル表面に幹細胞の分化を制御するEphrinB2などのタンパク質を固定化し、骨髄間葉系幹細胞の接着と増殖について評価した。平成23年度は、この刺激応答性ハイドロゲルをベースに幹細胞の増殖・分化を制御し、体内インキュベータの培養基材として検討を行う。
|