加齢に伴い著しく増加するのが骨の疾患であり、特に骨粗鬆症は我が国の国民病と言っても過言ではない。骨粗鬆症の患者には骨量の減少を遅延する医薬品"ビスホスホネート系化合物″が適用されている。ビスホスホネートは、骨粗鬆症の第一選択薬と位置づけられているが、食道内で炎症の引き起こすことや、消化管での吸収が極端に悪いことなどの欠点もある。そこで本研究はビスボスホネートと同様な薬理活性を示し、従来の低分子化合物に比べ高い安全性と持続的効果を期待できる新たな高分子医薬を提供することを目的とし企画された。 平成21年度は生体適合性に優れたポリリン酸エステルを得るために、有機触媒を使ったポリマー合成について検討した。ポリリン酸エステルは環状リン酸エステル化合物の会館重合により合成されるが、この開環重合には一般的にトリイソブチルアルミニウムやオクタン酸スズなどの金属触媒が使用される。これらの触媒がポリマー中に残存し毒性を発現することが懸念されるため、有機系重合触媒としてジアザビシクロウンデセン(DBU)を用いた新たな合成法について検討した。その結果、従来の金属触媒に比べ、分子量分布の狭いポリマーが得られ、開始剤として機能するアルコールとモノマーの割合を制御することにより、分得られるポリマーの分子量を性格に制御できることがわかった。この触媒は様々な環状リン酸エステル化合物の重合に適応でき、側鎖にイオン化したリン酸基を持つポリマーの合成にも成功している。このポリマーが骨の主成分であるヒドロキシアパタイトに対し強い親和性を示すことがわかった。
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