加齢に伴い著しく増加するのが骨の疾愚であり、特に骨粗鬆症は我か国の国民病と言っても過言ではない。骨粗鬆症の患者には骨量の減少を遅延する医薬品"ビスホスホネート系化合物"が適用されている。ビスホスホネートは、骨粗鬆症の第一選択薬と位置づけられているが、食道内で炎症の引き起こすことや、消化管での吸収が極端に悪いことなどの欠点もある。そこで本研究はビスホスホネートと同様な薬理活性を示し、従来の低分子化合物に比べ高い安全性と持続的効果を期待できる新たな高分子医薬を提供することを目的とし企画された。 平成22年度は前年度に合成したポリマーの溶液物性と石灰化におよぼす影響について検討した。側鎖にイオン性基を有する水溶性ポリリン酸エステルの末端にコレステリル基を導入することにより、水溶液中で数分子からなる会合体を形成することがわかった。このポリマーの臨界ミセル濃度やミセルのサイズ、会合数を光散乱測定により明らかにした。 このポリリン酸エステルの石灰華におよぼす影響をハイドロキシアパタイト(HAp)の形成阻害と溶解阻害を調べることにより追跡した。その結果、ポリマー中のイオン性基が増すにつれて、ポリマーがHApの形成阻害と溶解阻害を促進し、骨治療薬として使用されているビスホスホネート(BP)に比べ高い活性を示すポリマーを得ることにも成功した。このポリマーはBPに対し、毒性が低いことも明らかとなり、新たな高分子医薬としての有意性を示すことができた。
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