加齢に伴い著しく増加するのが骨の疾患であり、特に骨粗鬆症は我が国の国民病と言っても過言ではない。骨粗鬆症の患者には骨量の減少を遅延する医薬品"ビスホスホネート系化合物"が適用されている。ビスホスホネートは、骨粗鬆症の第一選択薬と位置づけられているが、食道内で炎症の引き起こすことや、消化管での吸収が極端に悪いことなどの欠点もある。そこで本研究はビスホスホネートと同様な薬理活性を示し、従来の低分子化合物に比べ高い安全性と持続的効果を期待できる新たな高分子医薬を提供することを目的とし企画された。 平成23年度は、22年度までに合成した側鎖にイオン性基を持つポリホスホエステルイオノマーの生物学的特性について検討した。まずこのポリマーの細胞毒性についてマウス骨芽細飽を用いて調べたところ、ポリリン酸エステルイオノマーのIC_<50>はビスホスホネートのIC_<50>に比べ重量比で600倍程度高いことが分かり、従来の骨治療薬に比べ生体適合性にすぐれていることが明らかにすることができた。更に、骨芽細胞が産生した、カルシウム沈着物にも良好に吸着し、ポリリン酸エステルイオノマーが骨指向性ポリマーとして機能する可能性がin vitroの試験で示された。 骨芽細胞の機能におよぼすポリリン酸エステルイオノマーの影響を調べたところ、ポリマーを接触させることにより、アルカリホスファターゼ産生やカルシウム産生が増進されることが認められた。一方、破骨細胞とポリリン酸エステルとの相互作用解析については、現在進行中であり、今後ビスホスホネートと同様なアポトーシス活性を持つポリマーの構造最適化を進めて行きたいと考えている。
|