研究概要 |
研究1 陸上短距離選手の下肢筋群の腱特性 100Mの公式記録が10秒台の陸上短距離選手15名を対象に、膝伸筋群および足底屈筋群の腱組織の力学的特性を一般成人と比較した。腱組織の力学的特性は、等尺性収縮中の超音波縦断画像より腱組織の伸張量を実測し、「張力-伸張量」関係から最大伸張量およびスティッフネスを算出した。膝伸筋群の腱組織において、短距離選手は一般成人に比べて腱組織の最大伸張量が大きく、スティッフネスが低かった。しかし、足底屈筋群の腱組織においては、両群間にそのような差異は認められなかった。以上の結果より、陸上短距離競技において、膝伸筋群の腱組織の伸展性が高いことが有利であることが示唆された。 研究2 静的および動的運動によるヒト腱のタイプ1コラーゲンの合成マーカの変動 静的および動的運動後における主に骨のタイプ1コラーゲンの合成を示すbone-specific alkaline phosphatase (BAP)と骨以外の組織(腱や皮膚など)も含む組織由良のタイプ1コラーゲンの合成を示すprocollagen type 1 C-peptide (P1P)の変動を比較し、両運動様式が腱のタイプ1コラーゲンの合成に及ぼす影響を検証した。8名の成人男性が、静的および動的膝伸展運動を50回ずつ実施した。その前後、1,2,24,48および72時間後に採血を行い、BAPおよびP1Pを測定した。BAPは、両条件ともに運動終了72時間後まで有意な変動はみられなかった。一方、P1Pは動的運動条件では有意な変動がみられなかったが、静的運動条件では24時間後に安静時より有意に高い値を示した。以上の結果、静的運動を実施すると、約1日後に腱のタイプ1コラーゲンの合成が高まる可能性が示唆された。
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