研究1 筋力トレーニングに伴うヒト生体における腱の力学的および代謝的特性の変化 筋力トレーニングに伴うヒト生体の腱ステイッフネス変化の機序を探るために、腱のコラーゲン合成の変化を非侵襲的に検証した。9名の成人男性が、等尺性足底屈トレーニングを3ヶ月間実施し、腱ステイッフネス、血中P1P量(コラーゲン合成を推定)を1ヶ月毎に測定した。腱ステイッフネスは、トレーニング開始3ヶ月後に有意な増加が認められた。血中P1P量は、トレーニング開始2ヶ月後に有意な増加がみられた。以上の結果より、トレーニングに伴う腱ステイッフネスの増加に先行して、腱内のコラーゲン合成が高まることがうかがえた。 研究2 高気圧酸素カプセル療法が腱の血液循環に及ぼす影響 ヒト生体におけるアキレス腱の血液量(THb)および酸素飽和度(StO2)に対する高気圧酸素療法の急性の影響を検証した。気圧および吸引する酸素濃度を変えた3条件(1.3気圧+50%酸素条件、1.3気圧+常酸素条件、常気圧+50%酸素条件)を比較し(実験1)、60分間の療法後1~72時間後までの回復過程の変化(実験2)を測定した。実験1では、療法終了時における安静時に対するTHbおよびStO2の変化率は、3条件間で有意な差は認められなかった。実験2では、療法終了3時間後には安静時レベルまで戻った。以上の結果、高気圧酸素療法による腱内の血液量および酸素飽和度の増加には気圧および吸入する酸素濃度の両方が影響していること、そして3時間後にはその効果が消失することが明らかになった。
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