本研究計画は、第三期科学技術基本計画に定められた「科学技術が及ぼす倫理的・法的・社会的課題への責任ある取り組み」の具体的な現状と、その類型化・比較、理論構築・評価指標策定を試みることを目的としている。初年度は、ベースライン調査として、日本で行われている、人を対象とした医科学研究の大型研究プロジェクトを推進するために行われている実践について情報収集することを目的として研究を行った。3つの省が財政的に支援する10の長期的な研究プロジェクト(5年間以上)について抽出し、その取り組み状況について把握をした。ヒトゲノム・遺伝子解析研究を伴う研究プロジェクトについては、すべての研究プロジェクト内部に何らかの倫理的な検討組織が存在していることが確認された。がん、脳科学についても同様であった。他方、再生医学については、その取り組みが端緒についたばかりであることが確認された。また、倫理的な検討組織の役割や位置づけ、開催頻度、研究プロジェクトとの関係性については異なっており、審査機能、諮問に対する回答を行う機能、モニタリングを行う機能等が見られたほか、中長期的な研究の影響を検討する調査研究機能については別途研究費を獲得することにより可能となっているところがあった。特に、研究プロジェクト本体が考える倫理的案検討組織の機能、情報共有の方法などには対応の差が見られた。また、アウトリーチ活動については、すべての研究プロジェクトが講演会やシンポジウムを中心として、何らかの取り組みを行っていた。
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