平成22年度は、研究実施計画を上回るペースで、現地観測の展開と観測が実施でき、得られた観測、解析成果について国内・国際学会等での発表も多く行った。 まず、現地観測の協力研究機関である、ロシア・永久凍土研究所の協力によって、観測地点の設置と観測の継続がされた。4月と9月にシベリア・ヤクーツクの現地を巡検し、永久凍土荒廃の観測サイトの選定ならびに、地温・土壌水分の鉛直分布観測地点を新設し、観測を開始した。また、本科研で購入済みの熱特性計によって、9月に土壌熱特性(熱伝導率・熱拡散率)の鉛直構造の測定を開始した。地下10mの永久凍土層内までの地温鉛直分布観測用の凍土用掘削ボーリング機を輸出し、土壌の水ポテンシャル測定機器の購入によって、凍土観測点の次年度以降のさらなる観測増強に向けた体制を整えた。 気候データ解析では、更なる湿潤化の実態と、凍土環境変動要因の解明についての解析を行うとともに、北極の気候変動に伴う最近のシベリアでの寒気形成過程に関する解析を新たに開始し、その成果を国内の気象学会ならびに地理学会で速報した。 さらに、最近の東シベリア一帯の気候湿潤化に伴う、シベリア北方林(タイガ)内の凍土融解と、森林水循環の変調過程について、凍土荒廃とカラマツ林の葉面積・蒸散の変化との関係を解析した。この成果は、IPY-OSC、ISAR-2、AGUの国際学会で発表し、諸外国の凍土・水文・北方林の変動研究を行っている研究者と数多く意見交換できた。
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